プロセスバンク by 得田裕介

経営コンサルタント problem solving and decision making

ゼロに立ち向える人達には必ず「謙虚な情熱」がある?!

科学の世界には、いつも「知的好奇心」と、そこに立ち向かう方々の「情熱」に刺激を受けます。

そこで今日は、「科学」の分野からこちらの作品です。

科学の扉をノックする (集英社文庫) | 小川 洋子 | 本 | Amazon.co.jp

7人の専門家にインタビューをし、それぞれ異なる7つの分野について、素人でも分かる口調で説明と著者小川洋子さんのユーモアある解釈や心情(妄想?)が入ります。

単純に「知識」という観点でも面白いです。

例えば、彗星と流れ星の違い。DNAと遺伝子の違い。目に見えないほどに小さなものを見えるようにするためには、目には見えないほどに速いエネルギーによって放射光を活用すること。などなど。

特に、人をつくる遺伝情報のセット、つまり、ヒトゲノムの構成については、様々な観点から含蓄がありました。

遺伝情報の暗号には、たったの4つ、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の4文字からなります。それぞれの文字が並びをかえてセットになります。そして、このセットは、30億もの数で構成されています。

そこで、考えられないことですが、この30億のパターン(並び方)は、一つだけに決まっているのだそうです。

仮に、ランダムに並び方をかえられるとしたら、4の30億乗の可能性があります。

しかし、たった一つだけに決まっているんです。

それが、偶然になせる業なのか?いや、それは誰か選ぶ人、”サムシング・グレート”(親のようなもの)がいて、意図的にやったとしか説明がつかないと。

科学の世界にも、非科学的な存在を肯定しないと、説明がつかないことだらけだと。例えば、DNAに関することも、実は3%程度のことしか分かっていないと。

 

実はこれら専門家の方々には、共通することがいくつかあります。

その一つは、「分からない」ということを認識していることです。「謙虚」な姿勢で、それらを追究する「情熱」を秘めています。

私はそれは、性格が「謙虚だから」というよりも、追究を何度も何度も繰り返して、分からない領域をあぶりだせたからこそ、「謙虚になった」のではないかと思います。

私が講師として、トレーニングを提供する際も、「若手」や「中堅」といったキャリアの違いによって、その取組姿勢の違いは如実に出てきます。

若手は、「知っている=出来ている」と思い込んでしまう傾向が強くなります。聞いたことあるようなことだから、もう俺には必要ないと。

しかし、中堅は、失敗も成功も繰り返し、今の自分に何が必要なのだろうと「自問自答」し、その場に立つ傾向があります。そうすると、貪欲に前のめりになって、そのトレーニングに「追究・鍛錬」するように臨みます。

やはり、トレーニングには、適切な「タイミング」があると思っています。

 

遺体科学者の遠藤先生に至っては、こうおっしゃています。

「死んだ動物を無制限に集め続け、未来に残し続ける。それが一番エネルギーが沸いてくることなんです。」「人類や文化に対して私が貢献できる本当の形は、そこだけなんです。私が書いた論文など大したことはありません。そんなもおで人類の知は変わりません。けれど、無制限に集めた遺体を残しておけば、次の時代に可能性を引き継ぐことが出来ます」

希望がなければ、行動は起こせません。しかし、驕っていては、見えるものは見えず、得られるものも得られません。

ビジネスの世界においても、目の前の利益(お金)だけを追求して、短絡的な成功を、自分の能力の成功だと自負してしまう。そんなことは少なくはないと思います。

そうではなくて、本当に社会に必要なことは何だろうかと自問自答しながら、自分自身の微力さも認識しながら、それでも、ゼロに立ち向かって、何かを創って行く、そんな姿勢が必要なのではないでしょうか。

読み終えた後、当然、私自身の胸にも刺さる思いがしました。

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